2021年4月にエムガルディが発売され、続いてアジョビ、アイモビークが4か月遅れて発売されました。これらの薬剤の発売により片頭痛治療のパラダイムシフト(時代の規規範となる考え方や価値観が変化すること)起こっているといわれています。実際発売以来、片頭痛の治療がガラリと変化し、現在もなお変化し続けています。
CGRP関連抗体薬は注射薬です。投与方法はエムガルディのみ初回投与時に2本投与しその後1か月に1度投与を行います。アジョビ、アイモビークは4週毎に1本ずつ投与を行います。1年間投与を行うと3本とも費用はほぼ同じになります。副作用は注射を打った際の痛みとその後の発赤やかゆみなどです。CGRP受容体は脳のほか心臓や消化管に見られますが、極まれに便秘の副作用がある程度です。
投与する適応となる患者さんはガイドライン上は以下となっています。
「3カ月以上の片頭痛日数が1ヵ月に平均4日以上である成人の片頭痛患者において,日常生活の指導や急性期治療薬の服用を適切に行っても日常生活に支障をきたし,保険適用のある既存の片頭痛予防薬が忍容性や副作用から使用の継続ができない片頭痛患者への投与が推奨される.」

上記の当てはまる患者さんにほいほいと投与をするわけではありません。月に4日以上頭痛があっても鎮痛薬で痛みのコントロールができていれば今までの治療を継続します。鎮痛薬の効きが悪い、効かない、頭痛の頻度が多い、頭痛がない時も頭痛が気になって何もできない、する気が起きないなどがある場合はこの治療をお勧めします。もう一つのハードルは価格が高いことです。1本が3割負担で13500円(エムガルディ)、12500円(アジョビ、アイモビーク)です。コストパフォーマンスは個人差があるので何とも言えません。ただ頭痛で悩んでいる方は十分試してみる価値はある薬剤だと思います。投与は3か月間の投与(3回の投与)で効果を判定し、効果があれば半年から1年間継続します。3か月間お試しで投与をすることも無駄ではないと思います。

当院では受診後、問診、MRI(最後に撮影して5年経過していれば勧めています)の後、投与に関してご説明し同意いただければ投与のご予約をしていただきます。中には当院でトリプタンやそのほかの内服の予防薬(抗うつ薬や抗けいれん薬、β遮断薬、Ca拮抗薬など)の治療を行ってから投与をお勧めする場合もあります。CGRP関連薬剤は冷蔵保存しているため、冷えたまま投与すると常温に戻してから投与するより痛みが増悪するといわれています。そのため当日投与は行っていません。

当院でも発売当初からこの薬剤を投与し片頭痛が劇的に減少・消失し、患者さんから喜びの声を多く伺っています。我々医療従事者もやりがいを感じるほど、「よくなった」「頭痛を忘れるようになった」といううれしくなるお話をお聞きします。

おくだ脳神経外科クリニック