「こわい頭痛」について
放っておくと「こわい頭痛」
頭痛はありふれた病気です。ほとんどは命に別条のない頭痛ですが、一部には放っておくと命にかかわるこわい頭痛があります。これを区別するのはとても大事なことです。どのようなものが「こわい頭痛」なのでしょうか。
◇「こわい頭痛」を見分ける症状として、以下のようなものがあげられます。
- 突然の頭痛、今まで経験したことがない頭痛
- いつもと様子の異なる頭痛
- 日に日に頻度と程度が増していく頭痛
- 今までは頭痛などなかったのに、50歳を過ぎて初めて起こった頭痛
- シビレ・マヒなどの神経症状を伴う頭痛
- 癌などの病気を持っている方の頭痛
- 精神状態の変調を伴う頭痛
- 発熱・嘔吐などを伴う頭痛
以上のような症状があった場合はなぜ「こわい」のでしょうか。
◇一次性頭痛と二次性頭痛
頭痛は大きく分けて2種類あり、頭蓋内病変(頭の中の病気)とは関連のない一次性頭痛と頭蓋内病変が原因の二次性頭痛があります。二次性頭痛がいわゆるこわい頭痛です。例えばくも膜下出血、脳腫瘍、脳血管解離などが挙げられます。その他にも頭を打った数か月後に出現する慢性硬膜下血腫、鼻の中の病気である副鼻腔炎(蓄膿)、髄膜炎などがあります。一次性頭痛には片頭痛や筋緊張型頭痛、群発頭痛、後頭神経痛などがあります。一次性頭痛の診断は患者さんの頭痛の性質や体の診察、検査(CTやMRIなどの画像検査)で二次性頭痛が否定されたうえで診断されます。
「こわい頭痛」である二次性頭痛の代表的な病気を挙げてみます。
◇くも膜下出血(脳動脈瘤破裂、血管解離)
脳などの病気で起こる「こわい頭痛」の代表格は、くも膜下出血です。一般的に「くもまっか」と言われています。聞かれたこともあるかと思います。
典型的な症状は「今まで経験したことがない突然の激しい頭痛」で、意識を失うこともあります。ただし頭痛があまり目立たないこともあり注意が必要です。ガーンとする衝撃感、気が遠くなる感じや、めまい感などの異変がいきなり起こることが特徴です。くも膜下出血の多くは、脳動脈瘤という血管のコブが破裂することで起こります。再破裂が起こるとより重症となってしまうため、緊急の入院と早急な治療を要します。
くも膜下出血の患者さんは、ほとんどは救急車で病院に運ばれます。しかし、脳外科の外来をしていると、まれに歩いて外来を受診されるくも膜下出血の方がおられます。軽度のくも膜下出血はCTでも診断がつかないことがあり、その場合はMRIや腰椎穿刺などの検査が必要となります。当初は風邪と考えられたものが実はくも膜下出血であったと言うこともありうるため、突然の頭痛を自覚したときは、脳外科のある病院に救急受診するのが良いです。
また最近、脳動脈の解離による頭痛の患者さんの頻度が増えているといわれます。脳動脈解離による動脈瘤は、日本人では椎骨動脈という脳の後方へ行く血管にできることが非常に多く、後頭部に急な強い痛みを生じます。頭痛の性状からは片頭痛や後頭神経痛などと区別することは困難で、MRI検査で明らかになることがあります。大抵は何事もなく数ヶ月で回復しますが、まれにくも膜下出血や脳梗塞を起こすことが知られています。
◇脳腫瘍
脳腫瘍による頭痛は、突然に起こることはあまりなく、数ヶ月から数週間かけて徐々に強くなっていくことがあります。頭痛に手足のシビレや麻痺、眼の見えにくさ、けいれん、言語障害などの神経症状を伴うときは、CTあるいはMRI検査がおこなわれます。脳腫瘍がすべて悪性のものということはありません。適切な治療を受ければ元の生活に戻れることも多いので、気になる症状があれば早めに受診することが重要です。
◇その他
その他の二次性の頭痛としては、髄膜炎、高血圧、低酸素血症、頭蓋骨・頸・眼・耳・鼻・副鼻腔・歯・口の病気によるものなどがあります。
冒頭で提示した症状がある場合は、一度頭の中を調べてみてはいかがでしょうか。