• 脳震盪ではどんな症状が出る?
  • どんな症状が出たらすぐに病院へ行くべき?
  • 症状はいつまで続く?
  • 何科を受診すればいい?

頭を強く打った場面に、ご自身やご家族、周囲の方が居合わせたことはありませんか?

その場では大したことがないように見えても、後から症状が出てこないか、何科を受診すればいいのか、不安になりますよね。

脳震盪は、スポーツ中の接触だけでなく、日常生活のさまざまな場面で起こり得るケガです。部活動や試合中の接触はもちろん、自転車での転倒、階段や遊具からの転落、交通事故などでも発症します。

「頭を打った後に意識を失うことだけが脳震盪」と思われがちですが、実際には意識消失を伴わないケースも多く、外見では異常がわかりにくいために軽視されたり、見過ごされたりすることが少なくありません。「少し休めば大丈夫」と自己判断してそのまま活動を続けると、症状が悪化したり、まれに重大な事態につながったりすることもあります。

このページでは、脳震盪の症状、危険なサインの見分け方、疑われたときの対応、受診の目安、何科に行くべきかまでを、日本脳神経外科学会専門医の監修のもと解説します。

この記事で分かること
  • 脳震盪の症状(身体的・認知的・心理的)
  • すぐに受診すべき緊急サインの見分け方
  • 脳震盪が疑われたときの対応と、帰宅後の過ごし方
  • 何科を受診すべきかの判断基準

判断の軸をあらかじめ持っておくことで、不安なまま様子を見続けるのではなく、必要なタイミングで適切な行動を選べるようになります。

脳震盪とは

脳震盪とは、頭や体に強い衝撃が原因となり、頭蓋骨の中で脳が激しく揺れ動くことで発生し、一時的に脳の機能が停止・乱れる状態を指します。

MRIやCTなどの画像検査では出血や脳挫傷といった明らかな損傷(器質的損傷)が確認されないことが前提であり、見た目や検査画像に異常がなくても、脳の働き自体に一時的な変化が起きているのが脳震盪の特徴です。そのため「検査で異常なし」と言われても、症状が続く間は油断せず経過を見る必要があります

脳震盪の症状

頭を打った後、意識をなくす・記憶をなくすこと以外にも、次のような症状が現れることがあります。

脳震盪でみられる主な症状

身体的症状

  • 頭痛
  • 首が痛い
  • めまい・ふらつき
  • 耳鳴り
  • 吐き気・嘔吐
  • 視界がぼやける/物が二重に見える
  • 光や音に過敏
  • 倦怠感・疲労感
  • 睡眠障害

認知的症状

  • 混乱
  • 記憶障害
  • 集中力の低下
  • 反応の遅れ

心理的症状

  • 不安感
  • イライラ感
  • 落ち込む

※脳震盪は必ずしも意識消失を伴うとは限りません。意識がはっきりしているように見えても、上記のような症状が出ていれば脳震盪の可能性があります。

症状はいつ出て、いつまで続くのか

脳震盪の症状は、受傷した直後にすべて出そろうとは限りません。頭痛やめまいなど一部の症状は受傷直後から現れる一方で、集中力の低下や気分の落ち込みといった症状は、数時間後や翌日以降になって遅れて出てくることもあります

そのため「受傷直後は普段通りに見えたから大丈夫」と判断するのは早計です。受傷当日だけでなく、その後数日間の様子の変化にも注意を払う必要があります。

症状が続く期間には個人差があり、数日から数週間かけて回復していくのが一般的です。症状が長引くケースについては、後述の「脳震盪後症候群」もあわせてご確認ください。

また、お子さんは自分の体調の変化をうまく言葉で訴えられないことがあります。「なんとなく元気がない」「様子がいつもと違う」といった変化を、周囲の大人が観察してあげることが重要です。

なお、ご高齢の方は、頭を打った後しばらく経ってから症状が現れることもあります。数日で落ち着いたと思っても、数週間は様子に変化がないか気にかけておくと安心です。

こんな症状が出たらすぐに医療機関へ

以下のようなサインが見られる場合は、様子を見ずにすぐに医療機関を受診してください。

すぐに受診すべき症状
  • だんだん強くなる頭痛、なかなか治まらない頭痛
  • 強い吐き気や、何度も吐く
  • 様子がおかしい(ぼーっとする、混乱している、落ち着きがない)
  • 強い眠気がある、起こしても反応が鈍い・起きられない
  • ろれつが回らない、手足に力が入らない、しびれがある、動きがぎこちない
  • けいれん(体がガクガク震える)
  • 意識を失う(気を失う)

これらは、頭蓋内の出血など、より緊急性の高いケースを見逃さないためのチェックポイントです。一つでも当てはまる場合は、迷わず病院へ向かってください。

脳震盪が起こりやすいシチュエーション

脳震盪はコンタクトスポーツ(アメリカンフットボール、ラグビー、アイスホッケー、柔道など)の接触プレーで起こりやすいことはよく知られていますが、それだけではありません。

脳震盪が起こりやすい場面
  • 部活動や試合中の衝突・転倒
  • 自転車での転倒
  • 階段や高い場所からの転落
  • 遊んでいる最中に頭を打った場合
  • 交通事故(追突や衝突による衝撃)
  • 高齢者の方の転倒

このように、スポーツをしていない方やお子さんの日常生活でも起こり得るケガであることを知っておくことが大切です。

脳震盪が疑われたときの対応

スポーツの現場や日常生活の中で脳震盪が疑われる場面に遭遇したら、まず以下を徹底してください。

脳震盪が疑われたときにすべきこと
  • その場で活動・競技を中断させる
  • 一人にせず、様子を見守る
  • 無理に動かさない

症状の有無に迷う場合でも、「疑わしきはプレーから外す」が原則です。無理に競技を続けさせると、再度の衝撃によって症状が悪化するリスクがあります。転倒時などは、首や背骨の損傷が疑われる場合もあるため、必要以上に体を動かさないようにします。

まずは、意識の状態や受け答えに変化がないか、そばで確認するようにしましょう。

緊急サインが見られる場合はすぐに医療機関へ、それ以外の場合も念のため医療機関での評価を受けることをおすすめします。

受診後・帰宅後の過ごし方

診察を受けて「異常なし」と帰宅した場合でも、受傷後24〜48時間は症状が急変する可能性があります。ご家族や周囲の方が、この間の様子を注意深く見ておく必要があります。

帰宅後の過ごし方としては、次のような点を意識してください。

帰宅後に意識したいポイント
  • 安静:まずは心身ともに休ませることを優先します。無理に普段通りの活動を再開しないようにしましょう。
  • 睡眠:十分な睡眠をとり、脳を休ませます。
  • 画面時間:スマートフォンやテレビ、パソコンの画面を見る時間は、症状が落ち着くまで控えめにします。光や情報の刺激が症状を悪化させることがあります。
  • 食事・水分:無理のない範囲で、通常通りの食事と水分補給を行います。
  • 運動の再開:症状が完全に治まるまでは、体を使う活動を再開しないことが大切です。運動やスポーツへの復帰は、後述する段階的なステップを踏んで判断します。

これらの間に症状が悪化したり、新たな異常が現れたりした場合は、速やかに医療機関へ相談してください

何科を受診すべきか

頭を打った後の症状であれば、まずは脳神経外科への受診をおすすめします。

受診先を選ぶポイント
  • 脳神経外科(第一選択):CTやMRIの設備があり、脳の構造的な異常(出血など)がないかを直接判断できるためです。
  • スポーツ外来・整形外科(スポーツ現場の場合):スポーツドクターのいる整形外科でも初期対応が可能な場合があります。ただし、最終的な脳の状態の診断は脳神経外科と連携することが多くなります。

段階的な競技・学業復帰

脳震盪からの回復期に、症状が治まらないうちに競技や普段の活動を再開すると、回復が遅れたり、症状がぶり返したりすることがあります。復帰は、医師の判断のもとで段階を踏んで進めるのが基本です

学業についても同様で、症状が続いている間は授業や勉強量を調整し、無理のない範囲から徐々に元の生活へ戻していくことが望ましいとされています。競技復帰を急ぐ気持ちがあっても、自己判断で段階を飛ばさないようにしてください

注意したい合併症

脳震盪では、症状そのものへの対応だけでなく、回復途中に起こり得る合併症についても知っておく必要があります。ここでは、特に注意したい2つの状態をご紹介します。

セカンドインパクトシンドローム

分かっていること

脳震盪の症状が完全に回復しないうちに、再度頭部へ衝撃を受けてしまうことで、脳に重大な損傷が生じる場合があります。特に成長期の子どもや若年層のスポーツ選手で注意が必要とされており、これが「疑わしきはプレーから外す」という原則が重視される大きな理由の一つです。一度脳震盪を起こした場合は、症状が完全に消失し、医師の許可が出るまで再受傷のリスクがある活動を避けることが重要です

脳震盪後症候群(症状が長引く場合)

多くの場合、脳震盪の症状は数日から数週間で軽快しますが、中には頭痛や集中力の低下、めまいなどの症状が数週間から数ヶ月にわたって続くケースもあります。このような状態は「脳震盪後症候群」と呼ばれます。症状が長引いて日常生活に支障が出ている場合は、自己判断で様子を見続けず、医療機関に相談してください

コンタクトスポーツと脳震盪 — 繰り返すことの危険性

コンタクトスポーツと脳震盪は切っても切れない関係にありますが、決して容認していい怪我ではありません。脳震盪を軽い怪我と考えるのは大きな誤りです。近年、アメリカンフットボールやラグビー、アイスホッケーなどのコンタクトスポーツでは、脳震盪に対して厳しい目が向けられるようになっています。

その理由は、脳震盪を繰り返すとCTE(慢性外傷性脳症)につながるおそれがあり、現役引退後にうつや不眠などの精神疾患、パーキンソン症候群、認知機能障害を発症しやすくなることが指摘されているためです。

この問題は、2015年に公開された映画『Concussion』でも取り上げられており、繰り返す脳震盪と選手の脳への影響を調査したオマル医師の研究をもとに描かれています。

選手本人だけでなく、指導者やご家族も脳震盪について正しい知識を持ち、予防法・対処法を理解しておくことが重要です。

セルフチェックツール(CRT5)

一般の方向けに、脳震盪の徴候に気づくためのチェックツール「CRT5」が公開されています。2016年に開催された「スポーツと脳震盪に関する国際会議」で作成されたもので、選手・スタッフ・ご家族が現場で脳震盪の兆候を確認する際の参考になります。

crt5の解説画像

慶應義塾大学スポーツ医学研究センター公開/日本語版作成:日本脳神経外傷学会)

まとめ

脳震盪は「意識を失う・記憶をなくす」ことだけが症状ではなく、頭痛・めまい・しびれ・集中力の低下など幅広い症状として現れます。症状の出方には時間差があるため、受傷直後に問題がなく見えても、その後数日は様子の変化に注意してください

軽く見て競技や日常生活を続けると、症状の悪化やセカンドインパクトシンドロームなどのリスクにつながるおそれがあります。緊急サインが見られる場合はすぐに医療機関を受診し、そうでない場合も受傷後48時間は経過観察を行いましょう。

何科に行くべきか迷ったときは、まず脳神経外科への相談をおすすめします。おくだ脳神経外科クリニックでは、日本脳神経外科学会専門医が頭部外傷後の症状について診療にあたっています。気になる症状がある方は、お早めにご相談ください。

監修者情報・参考文献

医療情報は正確性が求められるからこそ、「誰が監修しているか」「どの資料に基づいているか」を明示することが大切です。本記事は、脳神経外科専門医として臨床経験を持つ医師の監修のもとで作成しています。

監修医プロフィール(おくだ脳神経外科クリニック 院長)

本記事は、おくだ脳神経外科クリニック院長・奥田 泰章が監修しています。

監修医プロフィール
  • 院長名:奥田 泰章(おくだ やすあき)
  • 資格:日本脳神経外科学会専門医/日本脊椎外科学会認定医
  • 臨床経験:脳神経外科医として約20年
  • 専門領域:脳卒中・脳腫瘍・脊椎脊髄疾患
  • 所在地:大阪府吹田市江坂町2-1-47 京阪神新江坂ビル1F

令和元年9月に大阪メトロ御堂筋線「江坂駅」近くで開院。1.5テスラMRIを院内に完備し、脳梗塞や脳動脈瘤の診断に対応しています。手術が必要な場合は適切な総合病院への紹介を迅速に行い、手術を選択しない場合も当院で経過観察を継続します。

参考文献・関連情報一覧

  • CRT5(脳振盪認識ツール)/慶應義塾大学スポーツ医学研究センター公開、日本語版作成:日本脳神経外傷学会
  • 第5回国際スポーツ脳振盪会議(2016年10月、ベルリンにて開催)の合意声明に基づくツール

参考文献についての補足

上記の資料は改訂・更新されることがあります。最新の情報については各学会・機関の公式サイトをご確認ください。また、本記事はあくまで一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個別の診断や治療方針を示すものではありません。気になる症状がある場合は、医療機関を受診してください。

おくだ脳神経外科クリニック