今回は前頭葉の中で手足など随意的な運動の指令を出す一次運動野についてです。

中心溝という前頭葉と頭頂葉を分ける溝の前頭葉側に位置し,中心前回とも言われます。ちなみに頭頂葉側は中心後回と言い,手足などの感覚を司る部分になっており運動の中枢と感覚の中枢が隣り合っています。

一次運動野は大脳皮質(表面)にあり,頭頂部から耳に向かう形で並んでいます。頭頂部分に足や体幹,耳側に行くにつれて肩,手,そして顔面の順番です。そのため,頭頂部に近い部分の障害では足や体幹に,耳側では手や顔面に運動麻痺が生じます。脳の血管で前大脳動脈と中大脳動脈がありますが,前者は頭頂部の方を,後者はそれよりも耳側の方を栄養している血管です。そのため,前大脳動脈の閉塞で足や体幹に,中大脳動脈の閉塞で手や顔面に症状が強く出ます。

この一次運動野から始まる神経線維は一塊になりながら下降し,脊髄を通って各筋肉に信号を送ることで筋収縮が起こり運動することができます。この神経路を外側皮質脊髄路と言って,これが脳卒中の運動麻痺に関わっている主の部分となります。

 

運動麻痺の症状が出るということは,この一次運動野から外側皮質脊髄路のどこかに損傷が起こっていることが考えられ,早急な検査・治療が必要となります。

基本的に損傷した脳細胞が回復することは無いと言われていますが,損傷により使えなくなってしまった経路以外で新たな神経経路を構築していくことにより回復していきます。それを促すのがリハビリの役割になります。そして,この回復過程で間違った身体の使い方をしているとその動きでの動作方法を学習してしまい,非効率的な動作や二次的な痛みの発現につながることもあります。

発症後,2−3ヶ月が回復のピークで,半年以降は回復幅が少なくなると言われているので発症後早期の内に積極的にリハビリを行っていく必要があります。

 

理学療法士 杉澤

おくだ脳神経外科クリニック