頚性めまい
- 頚性めまいは自分で治せる?
- どんなストレッチが効く?
- 治るまでどれくらいかかる?
- 何をしても治らないのはなぜ?
首を動かすと、ふわっとくる。ぐるぐる回るのではなく、足元が定まらない。肩と首はいつもこっていて、耳鳴りはない。そのめまいの原因は、首にあるかもしれません。首が原因で起こるめまいを、頚性(けいせい)めまいと呼びます。
この記事では、自宅でできるストレッチや枕の見直し方から、それでも治らないときに考えられる原因、治るまでの期間の目安まで、脳神経外科専門医の監修のもと解説します。
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頚性めまいとは首が原因で起こるめまい
そもそも、首とめまいはなぜつながるのでしょうか。
首は、重い頭を支えているだけの場所ではありません。頭がいまどこを向いているかを脳に報告し続ける、センサーの集まった場所でもあります。
首こりが平衡感覚を乱す仕組み
脳がバランスを保つために使っている情報は、3つあります。耳の奥にある平衡感覚の器官、目に映る景色、そして首から届く報告です。
この報告を送っているのは、首の筋肉の中にあるセンサーです。筋肉がどれくらい伸びているかを感じ取り、その情報を絶えず脳へ送っています。特に後頭下筋群という首の最も深い層の筋肉には、このセンサーが体のどの筋肉より高い密度で集まっています。
3つの情報が一致しているあいだ、私たちは何も感じません。ところが首の筋肉が硬くなって報告が狂うと、耳や目から届く情報と食い違いが生じます。脳は「頭は動いていないはずなのに、景色が揺れている」という矛盾を受け取ることになる。この矛盾が、ふわふわとした感覚として自覚されます。
もともと「頚性めまい」という考え方が生まれたのも、ここが出発点です。めまいを訴える方に首の痛みを併せ持つ人が多く、首を治療するとめまいが軽くなる例が少なくなかった。その積み重ねから、首が関係しているのではないかと考えられるようになりました。
原因として挙げられる3つの説
首がめまいを起こす仕組みとしては、これまでに3つの説が示されてきました。
| 説 | どういうことか |
|---|---|
| 頚部交感神経の障害説 | 首の骨の変化によって、そばを走る自律神経の働きが過剰になり、血管の調節が乱れる |
| 頚部固有受容器の障害説 | 首の筋肉が緊張し、筋肉の中にあるセンサー(筋紡錘)が誤った情報を送る |
| 椎骨動脈循環障害説 | 首の骨に沿って走る血管が姿勢によって圧迫され、血流が足りなくなる |
このうちどれが主役なのかは、今も決着していません。筋肉のセンサーによる説が語られることが多いものの、「これが原因」と1つに定まってはいないのが現状です。
つまり頚性めまいは、原因のはっきりした病名というより、首が関係していると考えられるめまいをまとめた呼び方に近いものです。この曖昧さが、後で述べる「治らないときに別の原因を疑う」という話につながってきます。
ぐるぐるではなくふわふわするのが特徴
めまいは、感じ方で大きく2つに分かれます。景色が回るぐるぐる型と、揺れる船に乗っているようなふわふわ型です。
頚性めまいは、後者が中心です。歩いていると足元が定まらない、立ち上がったときにゆらっとする、パソコン作業のあとに頭が浮いたような感じになる。はっきりした発作ではなく、だらだら続くのが特徴です。
逆に寝返りの瞬間に景色が回り、30秒ほどで止まるのなら、首ではなく耳の問題である可能性が高くなります。
頚性めまいの治し方|首のストレッチと枕
ここからが本題です。首が関係しているなら、首の状態が変われば症状も変わります。逆に言えば、ここで何をしても変わらないなら、原因は首ではないと分かります。試すこと自体に意味があります。
ただし、めまいがあるときに勢いよく首を回すのは危険です。転倒の恐れがあるため、これから紹介する運動はすべて座った姿勢か、横になった姿勢で行ってください。
首・肩をほぐすストレッチ
狙うのは、頭の付け根と肩の上の2か所です。道具は使いません。どれも1分ほどで終わります。
枕の高さを見直す
見落とされやすいのが、眠っているあいだの首の形です。
枕が高すぎると、横から見た首はうつむいているときとほとんど同じ形になります。日中の悪い姿勢を、寝ている6〜7時間そのまま続けているのと変わりません。首の筋肉はゆるむ時間をもらえず、硬いまま朝を迎えることになります。朝起きた時点ですでにふらつく、という方は特に見直す価値があります。
目安は、仰向けに寝たときに顔がわずかに前を向く高さです。あごが上がるほど低く、あごが胸に近づくほど高すぎます。市販の枕で合わせにくい場合は、タオルを畳んで高さを微調整すると自分の首に合わせやすくなります。
モニターの高さと座る姿勢を見直す
頭はボウリングの球ほどの重さがあります。まっすぐ乗っているあいだは骨が支えますが、前に出ると、その重さは首を引っぱる力に変わる。倒れないよう後ろから引き戻し続けるのが、首の後ろの筋肉です。
姿勢を整えることは、この筋肉の仕事を減らすことと同じです。効くのは次の3点です。
- モニターの上端を、目線と同じかやや下の高さに合わせる
- ノートパソコンは台に載せ、キーボードは別に用意する
- スマートフォンは目の高さまで持ち上げて見る
加えて、1時間に一度は首を動かすことを決めておくのが確実です。同じ角度で止まっている時間そのものが負担になるため、ストレッチより先に「止まり続けない」ほうが効いてきます。
首を温めて血流を改善する
硬くなった筋肉は、中を通る血管がしめつけられて血のめぐりが落ちています。温めるのは、この流れを取り戻すためです。
蒸しタオルを首の後ろに当てる、湯船で肩まで浸かる。それで十分です。10分程度が目安で、ストレッチの前に温めておくと筋肉が伸びやすくなります。
ただし、ズキズキと脈打つような痛みがあるとき、腫れや熱っぽさがあるときは温めないでください。その場合は炎症が起きている可能性があり、温めると悪化することがあります。
すぐに受診すべき危険なめまいのサイン
ここまでのセルフケアは、首が原因と考えられるめまいを想定したものです。次のような出方をするめまいは、対象外になります。
特に注意したいのが、まっすぐ歩けない、体が一方へ倒れるという症状です。平衡感覚をまとめている小脳に異常があると、めまいの強さより先に歩き方に出ることがあります。「めまいは軽いのに、なぜかふらついて壁に手をつく」。この出方はセルフケアの範囲ではありません。詳しくは小脳の機能について解説した記事もあわせてご覧ください。
治らない場合は頚性めまいではない可能性
頚性めまいには、血液検査の数値や画像に写る目印がありません。そのため診断は、ほかの病気ではないと一つずつ確かめていくという手順で進みます。
言い換えると、首のケアで何も変わらないという事実そのものが、診断の手がかりになります。首ではなかった、ということです。間違われやすいのは次の3つです。
良性発作性頭位めまい症との違い
朝、布団から起き上がった瞬間に天井が回る。棚の上を見上げたらぐらっとくる。そして30秒ほどで、何ごともなかったように止まる。
この出方なら、首ではなく耳です。耳の奥にある小さな石のような粒が、本来ない場所へ入り込んで起こる良性発作性頭位めまい症で、めまいの中でもっとも多い病気とされています。
頚性めまいと似ているのは、どちらも頭を動かしたときに出る点です。分かれ目は、回るか揺れるか、短く終わるか長く続くかの2つです。
メニエール病との違い
めまいが来る前に、片方の耳がつまった感じがする。音がこもって聞こえる。耳鳴りが急に大きくなる。
この組み合わせなら、耳の病気を先に考えます。耳の奥のリンパ液が増えすぎて起こるメニエール病で、めまいはぐるぐる型。20分から数時間続き、繰り返すのが特徴です。
首のこりでは、耳の聞こえは変わりません。聞こえにくさや耳鳴りがあるなら、耳鼻咽喉科での検査が必要になります。
脳が原因のめまいとの違い
いちばん見落としたくないのが、ここです。
脳梗塞や脳出血、脳腫瘍でもめまいは起こります。頻度は高くありませんが、見逃したときの影響がもっとも大きい原因です。
手がかりは、めまい以外の症状です。手足のまひやしびれ、ろれつが回らない、物が二重に見える、まっすぐ歩けない。ひとつでもあれば、首ではなく脳を先に調べます。
やっかいなのは、ふらつきだけが出て、ほかの症状がはっきりしない場合があることです。首のケアで変化がないふらつきを、そのまま放置しないほうがいいのはこのためです。
| 頚性めまい | 良性発作性頭位めまい症 | メニエール病 | 脳が原因 | |
|---|---|---|---|---|
| 感じ方 | ふわふわ・ゆらゆら | ぐるぐる回る | ぐるぐる回る | ふらつき・体が傾く |
| きっかけ | 首を動かす・同じ姿勢の後 | 寝返り・起き上がり | はっきりしないことが多い | 突然 |
| 続く時間 | 数分〜だらだら続く | 30秒〜1分 | 20分〜数時間 | 続く |
| 伴う症状 | 首こり・肩こり・頭痛 | 吐き気 | 耳鳴り・難聴・耳のつまり | まひ・言葉の障害・強い頭痛 |
この表は目安です。実際には複数が重なることもあり、自分で振り分けるのは簡単ではありません。2〜3週間セルフケアを続けても変化がないなら、次の一手は「もっと強くほぐす」ではなく「原因を確かめる」になります。
頚性めまいは何科?検査と治療の流れ
首の症状だから整形外科、めまいだから耳鼻咽喉科。どちらもありそうで、迷うところです。
迷ったときは、脳に異常がないかを先に調べられる科を選んでおくと後が楽になります。理由は順に説明します。
脳神経外科・耳鼻咽喉科・整形外科の使い分け
判断の軸は、いま出ている症状です。
| 診療科 | 向いている場合 |
|---|---|
| 脳神経外科 | 頭痛や手足のしびれを伴う/脳に異常がないかを先に確かめたい/首の骨もあわせて見てほしい |
| 耳鼻咽喉科 | 耳鳴り・聞こえにくさ・耳のつまりがある/ぐるぐる回るめまい |
| 整形外科 | 首の痛みが主で、めまいは軽い |
順番に迷うときは、脳に異常がないかを先に調べておくと後が楽になります。頚性めまいは他の原因を確かめたうえで診断されるため、脳の確認はどの道を通っても必要になるからです。めまい全体の受診先の選び方については、別の記事でも解説しています。
MRIで脳に異常がないかを確認する
MRIで見ているのは、主に脳です。脳梗塞や脳出血の跡、腫瘍、血管の異常。「首が原因」と考える前に外しておきたいものを確かめる検査です。
当院には1.5テスラのMRIがあり、検査時間は15分から20分程度。画像は院長が説明します。首の骨については、レントゲンやMRIで並び方や神経の通り道を確認していきます。
薬や市販薬で治るのか
めまいに使われる薬には、めまいを抑えるもの、内耳の血流を改善するもの、吐き気を止めるものがあります。首の緊張が強い場合は、筋肉をやわらげる薬を使うこともあります。
ただし、首が原因のめまいに対して、薬だけで解決するという考え方はとりません。薬はつらい症状を抑えて動けるようにするための手段で、首の状態そのものを変えるのは姿勢とリハビリです。市販の酔い止めで一時的にしのげても、根っこが残っていれば戻ってきます。
リハビリテーション
首が原因と考えられるめまいで、中心になるのがここです。
理学療法士が首や肩の動き方を確かめ、どこが硬く、どこが働けていないかを見たうえで進めます。自分でストレッチをしても手応えがなかった方の場合、ほぐす順番が抜けていることがあります。表面の大きな筋肉が硬いままでは、外から加えた力はそこで止まり、奥の筋肉まで届かないためです。
当院では、常勤の理学療法士3名と作業療法士1名が在籍し、頚部痛の改善を対応領域のひとつとしています。首の牽引装置、深い層まで温められるマイクロ波治療器、ホットパックも備えており、症状に応じて組み合わせています。詳しくはリハビリテーションのページをご覧ください。
脳の確認から首の骨の評価、リハビリまでを同じ院内で進められることが、この症状では意味を持ちます。院長は日本脳神経外科学会専門医であり、日本脊髄外科学会の認定医として首や腰の脊椎・脊髄の診療にあたっています。
頚性めまいが治るまでの期間と再発予防
「どれくらいで治るのか」は、この症状でもっとも多い疑問です。ただし正直に申し上げると、期間を約束できる症状ではありません。
どれくらいで治る?改善の目安
首のこりがどれくらい続いていたか、姿勢の習慣を変えられるか、ほかの原因が混ざっていないか。この3つで経過は変わります。数日で軽くなる方もいれば、数か月かけて落ち着いていく方もいます。
期間を数えるより、向かっている方向が合っているかを確かめるほうが確実です。
再発を防ぐために続けたいこと
「治った」という体験談を探している方も多い症状です。ただ、やっかいなのは楽になったあとにあります。原因が日々の姿勢にあるため、元の生活に戻れば首の状態も戻るからです。
再発したときに慌てないためにも、自分の場合はどの動きで楽になったのかを覚えておいてください。それが次に戻ってきたときの、いちばん早い対処になります。
江坂で頚性めまいを相談できる当院
ここまで読んで、「自分はどちらだろう」と迷った方もいるかもしれません。当院には、首のケアを試している段階の方と、すでに診断を受けた方の両方が来られます。おくだ脳神経外科クリニックは、大阪メトロ御堂筋線「江坂駅」から徒歩7分です。
セルフケアを続けても治らない方へ
ストレッチも枕も試したけれど、ふわふわが消えない。そういう段階では、首以外の原因が残っているかどうかを確かめるのが先になります。
当院は院内に1.5テスラのMRIを備え、日本脳神経外科学会専門医が診察と結果説明を行っています。脳・首の骨・筋肉の3方向から切り分けられるため、「どこから調べるか」で回り道をせずに進められます。
頚性めまいと言われた方へ
「首のこりが原因」と言われても、では何をすればいいのかは分かりにくいものです。
当院では、理学療法士・作業療法士によるリハビリテーションを院内で行っています。医療保険・介護保険にも対応しており、診察からリハビリまで同じ場所で続けていただけます。自己流のストレッチで手応えがなかった方も、一度ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 整体や鍼灸に行ってもよいですか?
施術そのものを否定するつもりはありません。楽になる方もいます。ただ、受ける前に原因を確かめておくことをおすすめします。
理由は、めまいの原因が首とは限らないからです。耳の病気や脳の異常が隠れていた場合、施術では改善しないばかりか、時間を使ってしまうことになります。首が原因だと分かったうえで利用するのであれば、順番として安全です。
Q. トリガーポイントとは何ですか?
筋肉の中にできる、押すと痛む硬い部分のことです。押した場所から離れたところに痛みが響くことがあり、首や肩のこりの説明に使われます。
ただし、めまいをこれだけで説明できるわけではありません。首の筋肉が硬いことと、めまいが起きている理由は必ずしも同じではないからです。押してほぐす方法も、強すぎれば表面の組織を痛めます。
Q. ストレートネックだとめまいが起こりますか?
首の骨は、横から見るとゆるやかに前へカーブしています。このカーブが減って棒のように近づいた状態が、ストレートネック(スマートフォン首)です。
カーブが減ると、頭の重さを骨で支えきれず、筋肉が肩代わりします。首の筋肉が硬くなりやすい状態ではあるため、めまいの下地になることは考えられます。ただし、ストレートネックの人が必ずめまいを起こすわけではありません。画像の形だけで原因を決めず、症状の出方とあわせて考えることが大切です。
| RESERVATION ご予約・お問い合わせ 気になる症状は、我慢せずご相談ください | ||||||||||||||||||||||||||||||||
休診日:木曜・土曜午後・日曜・祝日/リハビリは15:00から | ||||||||||||||||||||||||||||||||
WEB予約は翌日以降の受付です。当日のご予約はお電話でお願いいたします。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
監修者情報・参考文献
医療情報は正確性が求められるからこそ、「誰が監修しているか」「どの資料に基づいているか」を明示することが大切です。本記事は、脳神経外科専門医として臨床経験を持つ医師の監修のもとで作成しています。
監修医プロフィール(おくだ脳神経外科クリニック 院長)
執筆者
本記事は、当院リハビリテーション科の理学療法士が執筆し、院長が監修しています。
参考文献・関連情報一覧
本記事の内容は、以下の学会ガイドラインおよび公的機関の情報を参考に、監修医の臨床経験を踏まえて作成しています。
- 日本めまい平衡医学会『良性発作性頭位めまい症(BPPV)診療ガイドライン 2023年版』
- 日本めまい平衡医学会『メニエール病・遅発性内リンパ水腫診療ガイドライン 2025年版』
- 日本整形外科学会『症状・病気をしらべる』(頚椎症性神経根症)
- 厚生労働省『情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン』
- 日本脳神経外科学会『脳神経外科疾患情報ページ』


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