前頭葉の機能 補足運動野
- 前頭葉はどんな働きをしている?
- どんな領域に分かれている?
- 障害されると何が起こる?
- 検査では何が分かる?
「手足は動くのに、自分から何もしようとしない」「怒りっぽくなって、別人のようになった」。脳卒中のあとに現れるこうした変化は、性格が変わったわけではありません。おでこの裏側にある前頭葉が傷ついたときに起こる症状です。大脳のおよそ3分の1を占めるこの部分は、中がいくつもの領域に分かれていて、どこが傷ついたかで現れ方が変わります。
この記事では、前頭葉の位置と働きから、6つの領域の役割、傷ついたときに起こること、検査とリハビリまで、脳神経外科専門医の監修のもと解説します。
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前頭葉とは大脳の前方にある部分
前頭葉とは、大脳を4つに分けたうちのもっとも前方にある部分です。脳全体は大脳・小脳・脳幹に分けられ、その大脳が前頭葉・頭頂葉・側頭葉・後頭葉の4つ(葉)に分かれています。
前頭葉の位置と大きさ
おでこの裏側から頭頂部の手前まで、広い範囲を占めています。後ろ側の境界は中心溝と呼ばれる深い溝で、ここから先は頭頂葉になります。
前頭葉は、大脳全体のおよそ3分の1を占めます。動物の脳と比べたとき、人間でもっとも大きく育っているのがこの部分です。先を読んで計画を立てたり、言いたいことを飲み込んだりできるのは、ここが発達したからだと考えられています。
担っている4つの働き
前頭葉の働きは、大きく4つに整理できます。
他の脳葉との違い
前頭葉が「行動を起こす」側だとすれば、他の3つの葉は主に「情報を受け取る」側を担っています。頭頂葉は触覚や空間の認識を、側頭葉は聴覚と記憶を、後頭葉は視覚を担当します。
受け取った情報をもとに、どう行動するかを決めるのが前頭葉の仕事です。それぞれの部位については、頭頂葉の機能、後頭葉の機能のページでも解説しています。また、運動の調整に関わる小脳の機能もあわせてご覧ください。
前頭葉の6つの領域と働き
ここからが本題です。前頭葉は、ひとつの働きをする塊ではありません。中を覗くと、役割の違う領域がいくつも並んでいます。代表的な6つを見ていきましょう。
| 領域の名前 | 担っている働き |
|---|---|
| 一次運動野 | 実際に体を動かす指令を出す |
| 運動前野 | 外からの情報をもとに動作を準備する |
| 補足運動野 | 動作の順序を無意識に組み立てる |
| 前頭眼野 | 目を意図した方向へ動かす |
| ブローカ野 | 思った内容を言葉として発する |
| 前頭前野(前頭連合野) | 考える・判断する・感情を抑える |
体を動かす3つの領域
運動に関わる領域は3つあり、それぞれ役割の階層が異なります。
一次運動野は、実際に筋肉へ指令を送る出口にあたります。この場所が損傷されると、反対側の手足にまひが生じます。中心溝のすぐ前にある「中心前回」という部分に位置しており、詳しくは中心前回の記事で解説しています。
運動前野は、その一段上流にあたります。目の前の物を見て手を伸ばすときのように、外からの情報に合わせて動作を準備する役割を担います。
補足運動野は、動作の順序を無意識のうちに組み立てている領域です。たとえばコップを持って水を飲むという動作は、手を伸ばす、つかむ、口へ運ぶ、傾けるという一連の流れでできています。私たちはこれを意識せずに行っていますが、その段取りを担当しているのがこの領域です。
言葉と目の動きに関わる領域
ブローカ野は、思った内容を言葉として組み立て、発するための領域です。多くの人では左側の脳にあります。ここが損傷されると、言いたいことは頭の中にあるのに言葉が出てこない、たどたどしい話し方になるといった症状が現れます。相手の話を理解する力は比較的保たれることが特徴です。
前頭眼野は、目を意図した方向へ動かす働きを担います。文章を読むときに行末から次の行の頭へ視線を飛ばす、あの動きです。読む速さや、探しものの見つけやすさにも関わってきます。
思考と判断を担う前頭前野
前頭前野は、前頭葉のうち運動や言葉に直接関わらない広い領域です。前頭連合野とも呼ばれ、人間でもっとも発達している部分にあたります。
どんな働きかというと、たとえばこんな場面です。買い物で「あとは牛乳だけ」と頭の片隅に置いたまま棚を探す。会議で言いかけた反論を飲み込む。相手の顔色を見て、言い方を変える。
段取りを決める、一時的に覚えておく、我慢する、場に合わせる。地味ですが、どれも欠けると生活が回らなくなる働きです。
なお「前頭葉」と「前頭前野」は混同されやすい用語ですが、前頭前野は前頭葉の一部という関係です。前頭葉全体のうち、運動野やブローカ野を除いた前方の広い部分が前頭前野にあたります。
前頭葉が損傷されると起こる症状
ご家族の変化が気になってこのページを開いた方には、ここからが知りたい部分かもしれません。
前頭葉の損傷は、脳梗塞や脳出血といった脳卒中、頭のけが、脳腫瘍などで起こります。どこがどれだけ傷ついたかで症状は変わりますが、代表的なものを順に見ていきます。
段取りが立てられなくなる
遂行機能障害と呼ばれる状態です。目標を決め、手順を考え、順番に実行し、うまくいかなければ修正する。この一連の流れが難しくなります。
包丁で野菜を切ることはできる。火をつけることもできる。それでも、みそ汁を温めながら魚を焼き、その合間に器を出すといった並行作業になると、手が止まってしまう。料理でつまずきが出やすいのは、こうした理由です。
知能検査では問題が見つからないこともあります。台所や職場ではじめて気づかれることも少なくありません。
自分から動き出せなくなる
発動性の低下、あるいは意欲の低下と呼ばれる症状です。
声をかければ動けます。着替えも、食事も、促されればできる。ところが自分からは始められません。テレビがついたままの部屋で、消そうともせず一日座っている。そういう過ごし方になります。
感情や行動が変わる
衝動を抑える働きが損なわれると、ささいなことで怒りっぽくなる、思ったことをそのまま口に出してしまう、場にそぐわない行動をとるといった変化が現れます。脱抑制と呼ばれる状態です。
ご家族から「別人のようになった」と言われることもあります。本人には変わった自覚がないことが多く、まわりだけが困るという形になりやすい症状です。
言葉が出にくくなる
ブローカ野が損傷されると、言葉を発すること自体が難しくなります。話そうとしても単語が出てこない、文章がつながらない、といった形です。
前頭前野の損傷では、言葉は出るものの話す量が極端に減る、話題を広げられないという形で現れることもあります。
同じ「言葉が出ない」でも、言葉を作る仕組みがうまく働いていないのか、話そうとする働きが落ちているのかで意味が違います。この見分けが、リハビリの進め方を分けます。
注意力や記憶への影響
ひとつのことに注意を向け続ける、複数のことに気を配る、必要なときに切り替える。この働きにも前頭葉が関わっています。
障害されると、まわりの音や人の動きにすぐ気をとられる。逆に、ひとつのことにこだわって次に移れない。どちらの方向にも変化が起こります。
記憶については、覚えること自体より、覚えた情報を使いながら作業を進める力が影響を受けやすいとされています。なお、手足のまひがないのに今までできていた動作ができなくなる状態については、失行に関する記事もあわせてご覧ください。
前頭葉の検査と評価
確認の方向は2つ。脳そのものを画像で見る検査と、課題を解いてもらって働きを測る検査です。どちらか一方では足りません。
画像検査で分かること
MRIやCTでは、脳のどの部分にどれくらいの範囲の損傷があるかを確認できます。脳梗塞や脳出血の有無、脳腫瘍の有無、脳の萎縮の程度などが分かります。
症状から前頭葉の障害が疑われる場合でも、実際にその部位に変化があるかを確認することが出発点になります。当院では1.5テスラのMRIを備えており、検査時間は15分から20分程度です。
働きを調べる検査
画像で見える変化と、実際の生活での困りごとは必ずしも一致しません。そのため、課題を通して前頭葉の働きを評価する検査も行われます。
代表的なものにFAB(前頭葉機能検査)があり、言葉の流暢さ、切り替えの力、衝動を抑える力などを短時間で確認します。このほか、日常生活の様子を家族から聞き取ることも、重要な評価の一部です。
前頭葉の障害とリハビリ
前頭葉のリハビリテーションは、失われた働きを元どおりにすることだけを目指すものではありません。
段取りを立てるのが難しいなら、紙に書いたものを見ながら進めればいい。自分から始められないなら、始まるきっかけを外に用意すればいい。できる形に持っていければ、その生活は続けられます。この考え方が土台になります。
訓練と環境調整の両輪
一つは、課題を使って働きを高める訓練です。調理や着替えのような一連の動作を、いくつかの手順に分けて練習する。決めた作業に注意を向け続ける練習を繰り返す。そうした積み上げ方をします。
もう一つが環境調整です。段取りが立てにくいのであれば、手順を紙に書いて見える場所に貼る。自分から始められないのであれば、決まった時間に声をかける仕組みをつくる。本人の力だけに頼らず、周囲の環境で補うという考え方です。
家族ができること
手足のまひは目に見えます。ところが段取りや意欲の変化は、外からは見えません。ご家族がいちばん戸惑うのがこの部分です。
まず知っておいていただきたいのは、これは本人の性格が変わったわけでも、努力が足りないわけでもないということです。脳のどこが傷ついたかによって起こる、症状のひとつです。
そのうえで、指示は一度に一つにする、選択肢を絞る、始めるきっかけを具体的に示すといった関わり方が助けになります。当院では理学療法士・作業療法士が、脳卒中後の高次脳機能障害に対するリハビリテーションを行っています。
江坂で脳の検査ができる当院
おくだ脳神経外科クリニックは、大阪メトロ御堂筋線「江坂駅」から徒歩7分の場所にあります。院内に1.5テスラのMRIを備え、日本脳神経外科学会専門医が診察と結果説明を行っています。
また、常勤の理学療法士3名・作業療法士1名が在籍し、脳卒中後の高次脳機能障害に対するリハビリテーションにも対応しています。手足の動きだけでなく、「家事の順番が組み立てられない」「一日じゅう動こうとしない」といった目に見えにくい変化についても、ご相談いただけます。
ご家族から見て「以前と様子が違う」と感じられることがあれば、その気づきが診療の手がかりになります。どうぞお気軽にお話しください。
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休診日:木曜・土曜午後・日曜・祝日/リハビリは15:00から | ||||||||||||||||||||||||||||||||
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監修者情報・参考文献
医療情報は正確性が求められるからこそ、「誰が監修しているか」「どの資料に基づいているか」を明示することが大切です。本記事は、脳神経外科専門医として臨床経験を持つ医師の監修のもとで作成しています。
監修医プロフィール(おくだ脳神経外科クリニック 院長)
執筆者
本記事は、当院リハビリテーション科の理学療法士が執筆し、院長が監修しています。
参考文献・関連情報一覧
本記事の内容は、以下の学会ガイドラインおよび公的機関の情報を参考に、監修医の臨床経験を踏まえて作成しています。
- 日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕』
- 国立障害者リハビリテーションセンター『高次脳機能障害情報・支援センター』
- 国立障害者リハビリテーションセンター『高次脳機能障害者支援の手引き』ほか支援・診療のための資料
- 日本脳神経外科学会『脳神経外科疾患情報ページ』
- 厚生労働省『障害者福祉』高次脳機能障害支援に関する情報


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